大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和55年(行コ)76号 判決 1981年9月10日

控訴人(原告) 小原清三

被控訴人(被告) 東京都知事

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

一  控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が昭和五一年六月一六日付で控訴人に対してした休職処分を取り消す。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  控訴の趣旨に対する答弁

主文第一、二項同旨

第二当事者の主張及び立証

当事者の主張及び立証は、控訴人が当審における証人篠原武司及び同河本豊の各証言を援用したほかは、原判決事実摘示記載(但し、原判決四枚目表三行目の「前記」から同五行目の「し、」までを「昭和五一年三月一五日以降同年四月一三日まで二五日間年次有給休暇をとつており、」と、同六行目の「休暇」を「有給休暇で」と、同五枚目表四行目の「四月一三日まで有給休暇」を「三月一五日から四月一三日まで二五日間年次有給休暇」と訂正し、同五行目の「いたこと」の次に「、控訴人が同年六月一六日当時勾留を継続されていたこと」を加える。)のとおりであるから、これをここに引用する。

理由

当裁判所も控訴人の本訴請求を理由がないと判断するものであるが、その理由は、次のとおり訂正、付加するほかは、原判決理由記載のとおりであるから、これをここに引用する。

一  原判決一八枚目五行目に続けて、「もつとも、当審証人篠原武司の証言によると、東京都の行うごみ収集作業は、東京都の職員のほか、民間会社の従業員によつて行われており、これらの従業員については経歴等が余り問題とされていないこと、控訴人が昭和五一年九月保釈されたのちごみ収集作業に事実上従事したが、その就労現場において住民との間に格別混乱の生じたことのなかつたことが認められるが、原審証人山田達三及び同越智恒温の各証言によると、ごみの収集作業は、民間会社の従業員が加わつて行われる場合でも、東京都の職員が指導的立場にたつているものであり、職員はいわば基幹的作業員であることが認められるところ、このような基幹的作業員たる職員が起訴される等した場合は、そうでない民間会社の従業員が起訴される等した場合に比して、住民一般が、ごみ収集事務又はこれに従事する作業員に対し、信頼を喪失するに至る程度は、極めて大きいと思われるから、民間会社の従業員については、その経歴を問題としないで、ごみ収集作業に従事させていた等の事実があつても、このことは本件起訴休職処分の適否を左右するに足りる事由とはいえないし、また、右処分当時、控訴人を引き続き職務に従事させる場合には、その職務に対する一般の信頼をゆるがせ、官職全体に対する信用を失墜させるおそれがあつたことは前示のとおりである以上、本件起訴休職処分後、控訴人が、勝手に、ごみ収集作業に従事した際に住民との間で混乱を生ずることがなかつたとの事実は、本件起訴休職処分を違法ならしめるものとはいえない。」を加える。

二  原判決一八枚目表八行目の「九月」から同九行目の「こと、」までを「六月一六日当時勾留が継続されていたこと、」と訂正する。

三  原判決二四枚目表五行目の「原告本人」の前に「当審証人河本豊の証言及び」を加え、同八行目に「嫌悪して」とあるのを、「嫌悪し、これを弾圧する目的で」と改め、同九行目を、「だとの控訴人の主張に一部符合する当審証人河本豊の供述部分は、次に掲記する証拠と対比して措信し難く、他に右主張を認めるに足りる証拠はない。」と改める。

四  原判決二四枚目裏六行目の「調査を」から同九行目冒頭の「は、」までを、「調査、すなわち、」と改める。

五  原判決二五枚目表二行目に「調査したうえ、同日、」とあるのを、「調査したこと、被控訴人は、同年六月八日、被控訴人の諮問機関である東京都職員懲戒分限審査委員会に対して分限処分についての諮問をしたこと、同委員会は、同日、被控訴人に対し、」と改める。

以上のとおりであるから、原判決は相当であり、したがつて、本件控訴は理由がないものというべきである。

よつて、民訴法三八四条、行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 園田治 菊地信男 柴田保幸)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例